
これまで企業型DC(企業型確定拠出年金)に加入していたけど、転職をしたら、これまで運用してきた確定拠出年金がどうなるのか不安に感じたことはありませんか?
この記事では、
- 確定拠出年金の種類
- 転職をした際にどうするのか?
- 移換手続きの手順
- 自動移換になった場合のデメリット
などなど、転職時の確定拠出年金についてすべてのことを解説します。
この記事を読むことで、転職後の確定拠出年金をどうすればよいのかきっと理解できます。これから転職をする場合も不安が少なくなると思うので、ぜひご一読ください。
目次
そもそも確定拠出年金には2種類ある
- 企業型DC(企業型確定拠出型年金)
- iDeCo(個人型確定拠出型年金)
転職前の会社で確定拠出年金に入っていた場合、確定拠出年金の移換手続きをしなければなりません。
まずは転職をする際の確定拠出年金の手続きを説明する前に、2種類の確定拠出年金について紹介していきます。
企業型DC(企業型確定拠出年金)
企業型DCとは企業が毎月掛け金を積み立て、従業員が年金資産を運用する方法のこと。
なお、企業型DCは従業員が自動的に加入するケースと、従業員が加入するか選択できるケースの2つがあります。
掛け金の拠出と金融機関の選択は会社が行いますが、どの金融資産をどのぐらいの配分で運用するのか決めるのかは従業員が決められるのです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
一方、個人型確定拠出年金iDeCoは、自分で加入することのできる年金制度です。企業型DCとは違い、毎月一定の掛け金を自分で拠出し、様々な金融商品で運用する制度です。
なお、企業型DCもiDeCoも投資できる金融商品は以下の3種類のみ。
- 預金
- 保険
- 投資信託
そのため、個別株や為替など大きな利益が狙える可能性がある金融商品には投資できません。
転職する前に転職先に企業型DCがあるかを確認しておくことが重要
転職をする際に、まず確認しなければならないのは、転職先に企業型DCの制度があるのかという点。
転職先に企業型DCがあれば、現在の会社の企業型DCから転職先の企業型DCに資産を移換すれば良いだけの話です。
しかし、転職先の企業に企業型DCの制度がない場合は、自分でiDeCoに資産を移換する必要があります。
また、iDeCoの口座を持っていない場合は口座開設を事前に行わなければなりません。
なお、運用管理を行う金融機関については、転職前の企業型DCの金融機関も含めて、自分の好きな金融機関を選ぶことも可能です。
転職する際の確定拠出年金の手続きまとめ!
転職をする際には、転職先に企業型DCの制度があるなしに関わらず、資産の移換手続きが必要です。具体的にどのような手続きを行う必要があるのか解説します。
転職先に企業型DCがある場合:転職先の企業型DCを継続利用できる
- 転職先の総務・人事・経理などに企業型DCに入っていることを伝える
- 個人別管理資産移換依頼書を書いて提出
- 転職前の会社と転職先の会社で移換手続きをしてくれる
- 手続き完了後移換完了の通知が自宅に届く
- 運用商品の状況を確認する
- 不満があれば、自分で運用したい商品に切り替える
転職先に企業型DCがある場合は、引き続き転職先で企業型DCを利用できます。
転職先の会社の総務・人事・経理などが担当者になるので、転職前の会社で企業型DCに入っていたことを伝えてください。
転職先の会社に相談をすると、個人別管理資産移換依頼書と呼ばれる書類を渡されるので、必要事項を記入して提出すれば、会社同士で移換手続きを行ってくれます。
手続き完了には、1,2週間かかります。移換完了の通知が自宅に届くので、必ず運用商品の状況を確認してください。
なぜなら、企業型DCで選べる金融商品は会社によって違うから。転職後の会社の企業型DCのほとんどが預金型に配分されるケースもあります。
そのため、移換後の資産配分を確認して、納得がいかなければ、自分の希望する金融商品に切り替えましょう。
転職先に企業型DCがない場合:企業型DCの資産をiDeCoに移換する
- iDeCoの口座を作っておく
- 金融機関に企業型DCに加入していたことを伝える
- 個人別管理資産移換依頼書に記入して金融機関に提出
- 受付完了後、自動的に転職前の企業型DCの資産がiDeCoの口座に移される
一方、転職先の会社に企業型DCがない場合は、やや面倒です。退職した会社の企業型DCをiDeCoに移換しなければなりません。
そのため、まずはiDeCoの口座を開設します。口座開設後、企業型DCの金融機関に対して企業型DCに加入していたことを伝えてください。
担当者から個人別管理資産移換依頼書をもらえるので、必要事項を記入して提出します。
移換の受付が完了すると、自動的に転職前の企業型DCの資産は売却され、資産がiDeCoの口座に移されるのです。
なお、この手続きは、退職をして企業型DCの資格喪失後6ヶ月以内に行ってください。
特にiDeCoの口座開設手続きには2,3ヶ月かかるので、余裕を持って手続きをすすめましょう。
運営管理機関(金融機関)は自分で選ぶことも可能
確定拠出年金の運営管理を行う機関を運営管理機関と呼びます。
運営管理機関は、加入者等に関する事項の記録や保存、運用状況の通知や運用商品に関する情報の提供などを行っています。
企業型DCの場合、運営管理機関は会社が選ぶため、従業員が自分で選ぶことはできません。しかし、iDeCoに加入する場合は、自分で運営管理機関を選べます。
金融機関によって運用できる商品が違うので、自分でiDeCoに加入する場合は、どの金融機関にするのか比較検討しましょう。
こういうケースで確定拠出年金はどうなる?転職・退職など事例別の手続きを解説
- 自営業者になったケース
- 公務員になったケース
- 専業主婦になったケース
ここまでは、民間企業への転職をした場合のケースで解説してきました。しかし、企業を退職後、民間企業に転職しないという選択肢もあります。
民間企業以外の企業に転職などした場合に、確定拠出年金がどうなるのか解説します。
自営業者になったケース
自営業者になった場合は、国民年金基金連合会の実施する個人型年金iDeCoに資産を移換します。拠出できる限度額は年額81.6万円です。
公務員になったケース
公務員に転職をした場合も、国民年金基金連合会の実施する個人型年金iDeCoに資産を移換します。なお、拠出できる限度額は年額14.4万円までです。
専業主婦になったケース
専業主婦になった場合も、国民年金基金連合会の実施する個人型年金iDeCoに資産を移換します。なお、拠出できる限度額が決まっており、年額27.6万円までとなっています。
このように、企業から民間企業への転職をしなかった場合は、いずれも国民年金基金連合会の個人型年金iDeCoへ資産を移換するのです。
なお、iDeCoへの移換手続きについては、自営業・専業主婦などに関わらず、以下の手順で手続きを進めます。
- 運営管理機関を選ぶ
- 運営管理機関である金融機関から書類を取り寄せる
- 提出書類と本人確認書類を郵送で送る
- 加入確認通知書が届く
- 運用方法と運用配分を決める
転職後は、6ヶ月以内に企業型DCの移換手続きを行う必要がある
転職をした際は、6ヶ月以内に企業型DCの移換手続きを行いましょう。移換手続きをしなくても国民年金基金連合会に自動移換されるので、資産はなくなりません。
しかし手数料がかかり、現金での運用になるため、確定拠出年金に入っている意味がなくなってしまいます。
必ず前職を退職して資格喪失後6ヶ月以内に手続きを行ってください。
確定拠出年金の移換手続きは楽天証券・SBI証券など金融機関から行う
- 証券会社
- 銀行
- 信用金庫
- 保険会社
前職の確定拠出年金をiDeCoへ移換する際には、運用管理機関である金融機関から移換手続きを行う必要があります。
その際の運用管理機関は、証券会社や銀行など221社(2020年7月現在)の中から自由に選ぶことが可能です。
なお、運用管理機関の金融機関は厚生労働省のホームページから確認できます。
確定拠出型年金の移換手続きを放置して自動移換になった場合のデメリットとは?
- 税制の優遇が受けられなくなる
- 資産の運用ができなくなる
- 手数料を取られる
- 貯めた年金の受け取り開始時期が遅れる可能性がある
確定拠出年金は、退職後6ヶ月以内に移換してください。もし、6ヶ月以内に移換をしなかった場合は、国民年金基金連合会に自動移換されます。
自動移換された場合には多くのデメリットが発生します。
税制の優遇が受けられなくなる
掛け金拠出時 | 企業が拠出した掛け金は給与所得にならないので、所得税・住民税の課税対象外 |
運用時 | 非課税 |
給付時 | 老齢給付金として受け取った場合、公的年金等控除や退職所得控除を受けられるので税金が減る |
自動移換されてしまうと、表にあるような様々な税制の優遇が受けられなくなります。確定拠出年金の税制の優遇が受けられなくなるメリットがなくなるのは明らかな損失です。
資産の運用ができなくなる
国民年金基金連合会に自動移換された場合、資産は現金で管理されます。そのため資産配分を変更しない限り、投資信託のような利息のつく運用ができなくなります。
現金だけで管理するのであれば、わざわざ確定拠出型年金にする必要はないので、損ですね。
手数料を取られる
手数料項目 | 手数料の金額 |
---|---|
自動移換手数料 | 4,348円 |
管理手数料 | 月額52円 |
個人型年金への移換手数料 | 3,929円 |
転職先の企業型年金への移換手数料 | 1,100円 |
自動移換をされると、管理手数料や自動移換手数料などが取られます。
さらに預けておくだけでも、毎月手数料が取られてしまうので資産も増えません。個人型年金iDeCoや企業型年金に移行する際にも手数料が取られてしまうので、明らかに損ですね。
貯めた年金の受け取り開始時期が遅れる可能性がある
確定拠出年金は、60歳になると受け取りが可能になります。しかし、自動移換中は、老齢給付金を受け取るための通算加入者等期間に参入されません。
そのため、確定拠出年金の受け取り開始時期が遅くなることがあるので注意が必要です。
転職をした際の確定拠出年金についてのQ&A
転職時の確定拠出型年金についてよくある質問をまとめてみました。
確定拠出年金は解約可能?
確定拠出年金は、原則60歳まで下ろせません。ただし、中途脱退が可能で、脱退一時金を受け取ることもできます。
確定拠出年金・確定企業年金・退職金の違いは?
まず、確定拠出年金と確定企業年金の大きな違いは、将来もらえる金額が決まっているか決まっていないかです。
確定拠出年金は掛け金を決めて、将来もらえる年金が資産運用次第になります。
一方、確定企業年金は、将来もらえる給付金は固定で、企業によって保証されています。
退職金は、将来もらえる退職金が社内規定で決まっている通りです。
このように、確定拠出年金は確定企業年金や退職金とは違い、将来もらえる給付額が増減するのです。
掛け金を拠出できなくなり、運用指図者になるとどうなるの?
掛け金を拠出できなくなった場合は、運用指図者になります。運用指図者とは、新たに掛け金を拠出せずに資産運用だけを行う人のこと。
資産の運用は続けられますが、掛け金を拠出しなくなるので、60歳の時に受け取れる金額も減る点には注意してください。
確定拠出年金には税金がかかるの?
確定拠出年金の税金の仕組みは以下のとおりです。
掛け金 | 全額所得控除 |
運用益 | 非課税 |
受取時 | 控除や非課税の対象になる |
資産を受け取る際に税金はかかりますが、直接運用するよりも税金を抑えられます。
確定拠出年金の脱退一時金を受け取るための条件は?
確定拠出年金は、途中で解約しても脱退一時金を受け取ることができますが、それぞれの条件を満たす必要があります。
確定拠出年金の種類 | 条件 |
---|---|
企業型DC |
|
iDeCo |
|
条件はかなり厳しいです。そのため確定拠出年金は、60歳まで下ろさないことを前提に利用しましょう。
確定拠出年金は、一時金と年金のどちらで受け取ったほうがよいの?
確定拠出年金は年金・一時金で受け取る方法があります。どの方法で受け取るのがベストかはその人次第です。
年金として受け取ると、60代前半は公的年金と合わせて70万円、65歳以上なら120万円まで非課税です。
一時金で受け取ると、退職所得になるので、控除額を差し引いた半分のみに税金がかかります。
勤続年数や年金加入年数が長いほど控除額が高くなるのでお得です。
ただし、会社から退職一時金が出る場合は、確定拠出年金の一時金と退職一時金を足して控除額を差し引きます。
そのため、会社からの退職一時金が高い場合は、一時金で受け取ると払う税金が高くなる可能性があり、年金で受け取った方が良いケースもあります。
このように退職時の収入により税金が少ない受け取り方は変わる点に注意して受け取り方法を選びましょう。
確定拠出年金を積み立てた場合は、年末調整は必要になるの?
以下の方は、年末調整が必要になります。
- 企業型確定拠出年金に加入して自分で掛け金を支払っている
- 個人型確定拠出年金iDeCoに加入している
確定拠出年金の掛金は小規模企業共済等掛金控除に記入します。
確定拠出年金は日本版401kとも呼ばれているけど、どういう意味?
確定拠出年金は日本版401kとも呼ばれています。
これはアメリカの確定拠出年金が内国歳入法の第401条k項に税制優遇が定められていることから、401kプランと呼ばれていることから来ています。
転職をした際の確定拠出年金に関するまとめ
- 転職をした場合、前職の企業型DCから転職先の企業型DCかiDeCOに資産を移換する
- 手続きについては、転職先に企業型DCが用意されているかによる
- 退職後6ヶ月以内に移換の手続きをしなければ、自動移換になり様々なデメリットが発生する
転職をした際には、すぐに転職先に企業型DCがあるかどうか転職先に問い合わせてください。転職先に企業型DCがあれば、転職先の企業型DCに移換手続きができます。
また企業型DCがない場合は、自分でiDeCoの口座を開設して移換手続きをしなければなりません。
なお、移換手続きを退職後6ヶ月以内に行わなかった場合は、国民年金基金連合会に自動移換されるので注意してください。
自動移換されると、税制の優遇が受けられなくなったり、様々な手数料もかかったりします。
転職先に企業型DCがあるかを確認して、6ヶ月以内に移換手続きを行えば、確定拠出年金が継続でき、資産運用も行えるのです。